ふたりの父からもらったもの

連休中に父の四十九日を迎えました。

まだふとした瞬間、涙が溢れます。でも心身ともにつらい時期は過ぎました。

少しずつ人に会えるようになりましたし、夏色に変わりつつある空を楽しむこともできます。

何より私は絵を描いています。創作ができるほど元気になりました。

 

ただ、以前の私とはなにかが変わりました。

父との別れは「命の期限」というものを私に突きつけました。固く目を閉じた父に自分を重ねた瞬間、私は私の残り時間というものを指折り数えてしまいましhた。

 

 

普段、私はパステルアートを描いています。

純粋に描くのが好きなのと、それ以上に誰かの役に立つことが嬉しいのでインストラクターをしています。

最近、誰かの役に立つ、の「誰か」は一体誰なんだろうと考えるようになりました。

これまでは誰でもよかった。

こどもからシニアまで。絵が苦手なひとから好きなひと。日本人、海外の人。出会えるひとすべてに届けばいいと思っていました。それはそれでよかったのですが、いまはもっとピンポイントで届けたい「誰か」がいます。

 

それは高齢者施設の利用者さんとスタッフさんです。

毎日のレクリエーションに悩むスタッフさんの時間と労力を減らしたい。

スタッフさんと利用者さんのコミュニケーションの一助にパステルアートを活用してほしい。

年老いた私が施設でお世話になったとき、パステルアートがあればいいな~~なんて♪

広い意味では、認知症予防、心のセルフケアといったものです。

 

結局、原点に戻りました。

すべて10年も前から私がやってきてことで、一番大変で難しく感じた活動でもありました。

簡単で易しい、高齢者でも描けて満足のいく図案を作るのは本当に難しかったのです。

途中で描くのをやめた方もいて、なんども心が折れました。

 

では大変なのに、どうしてそこに戻ろうと思ったのか。

きっかけは、義父です。父は軽い認知症です。

私たち家族とは遠く離れた場所で、もう20年以上一人暮らしです。昨年の秋よりサ高住にいます。サイクリングが趣味な父は、当初、自分のマンションとサ高住を自転車で行き来する予定でしたが、コロナ禍で施設から出ることができなくなりました。

 

毎日のように父から電話がかかってきます。

「退所したい。男一人で話す相手がいない。退屈で退屈でこのままだと大変なことになる。完全にボケる!」と訴えてきます。父はユーモアのあるイケ爺です。そんな父と絵を描けたらなあ、と思ったのですが、残念ながら父に絵を描く趣味はありません。

父の役には立てそうにないのですが、ふと、もしかしたら他の利用者さんやスタッフさんの役に立てるかもしれないのでは?と思うようになりました。

指を動かすことは脳を活性化させます。

創作を楽しむ心。

みんなで鑑賞する喜び。

そんな時間を提供できればいいなと再び思うようになりました。

 

コロナ禍は続くでしょうし、これから認知症にかかる人も増えてくることでしょう。

もうすぐ50歳になる私にとって、パステルアートはすでに脳活になりつつあります。将来の自分のためにも、もう一度、高齢者向けのパステルアートというものに取り組んでみようと思います。ちなみに、私にアートセラピーや心理学などの専門的な知識はありません。この10年現場で培った経験だけです。それでも、なにかが作れるような気がしています。

とりあえず、一歩を。

 

二人の父のおかげで、これからまたワクワクな日々を送れそうです。

ありがとう。